
私は、住宅で一番大切なものは「住み心地」であると本に書きました。
住み心地を問わない建物は、事務所か倉庫です。住み心地を向上させるためには、家の性能を良くして、地震や腐れ、シロアリなどに対しても安心して住めるように造らなければなりません。
1990年頃から全国で性能を良くするための提案が目立つようになったのですが、現在では100通り以上がひしめき合って、我こそは「いい家」だと主張し合っています。
そこで国は、平成12年4月1日から住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づいて「性能表示制度」をスタートさせることにしました。
地震などに対する強さ、火災に対する安全、柱や土台などの耐久性、維持管理への配慮、省エネルギー対策、シックハウス対策、窓の面積、遮音対策、高齢者や障害者への配慮、以上9分野28項目にわたって客観的に性能を評価できる制度です。
ところが、その制度には大きな問題があります。家の性格、言い換えますと住み心地の良し悪しに大きく影響する構造と断熱の方法を問うていないのです。構造は、木造、コンクリート、鉄骨であってもいいし、断熱の方法はグラスウールを用いても、ウレタンパネルであっても何を用いても構わないとしています。
つまり、「住み心地」に最も影響を与え、家の性格を決定付ける大事なことに無頓着でいるのです。ですから、最近やたらと使われるようになってきた「性能評価満点住宅」のほとんどは、住み心地を目的として造られたものではないことに注意を向けるべきです。
それはとんでもないことです。国が推奨し、銀行や保険会社が融資や保険の条件にする「性能表示制度」という道しるべに従って建てられる家が、住宅の根源的な価値に乏しいものであるのですから。
それに対して、「いい家をつくる会」の会員は、住み心地を目的とする家づくりをしています。住み心地を向上させるためには、「構造」と「断熱の方法」そして「依頼先」の選択が何よりも大事であるという本の精神に則ってです。その三つの要素が、家の性格=住み心地を決定付けると確信し、その事実を熟知しているからです。
ところで、「住み心地」というものは主観的な価値ですから、独りよがりであったり、あいまいであったりしては説得力に欠けてしまいます。
しかし、もし実際にお住まいになられたお客様からの証言が得られ、その数が増えるならば、それは主観から客観に変り得るものではないでしょうか?
100軒の家が造られて、そこに住む人のほとんどが口をそろえて「本当に住み心地のいい家だ!」と証言するとしたら、主観的でしかなかったものが客観的な価値となって説得力を増すものになると私は確信するのです。
このたび、その証言を求めましたところ、予想以上にたくさん寄せられてきて、その全部を編集することはとてもできなくなりました。そこで今回は、305家族の証言を第1巻としてまとめ、なるべく早い機会に続編を出させていただくことにしました。
同じ本を読んで建てられたわけですが、立地条件をはじめプラン、予算、家族構成、そして何よりも感受性が違う人たちが、どのような証言をされるのか、楽しみであると共に、不安もありで、読むのにはらはらドキドキしました。
これから建てようとする人は、この証言集を読むことによって、居ながらにして貴重な意見や感想を得ることができます。そして、証言者の声を直接聞きたいと思われたら、それぞれの家の造り手に問い合わせて、コンタクトをとってもらうことができます。
この証言集の魅力と価値は、そこにあります。これから建てる人が、より正しく、後悔しない家づくりを選択できるように、先人たちが証言という道しるべをつくってくれているのです。大いにご活用下さい。
最後に、証言をしてくださった方々に、心から感謝申し上げます。
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私が会社を創業したときに、父が贈ってくれた言葉があります。
それは「約軽しといえどもこれ重んずべし」というもので、どんな小さな約束事でも大事にしなさいという意味です。その言葉を、私はこのように理解しています。
お客様と交わす約束事には、契約書には書かれていないものがある、それは期待というものであって、それこそが大事なのだ、その期待という目に見えない約束を確りと守ることだと。
一般的には、契約書通りに造りさえすれば感謝されます。最近では、さらに性能評価を受けて、10年の瑕疵保証をつければ立派なものだとされています。でもその程度ではダメなのです。お客様が本当に期待しているものは、ハイレベルな「住み心地」なのだということに目覚めてみますと、その程度の家づくりではとても納得できないし、造り甲斐を見出せなくなります。
ですから契約書通りであるとか、性能評価を受けたとか、瑕疵保証をするという程度のことはやって当たり前。自慢できることは何もない。そこには感動も共感も生まれない。しかし文章化できない「住み心地」に対する期待という約束にお応えしたとき、お客様は心から喜んでくださいます。
「住み心地」に関して納得と共感が生まれる場合を、私は「感動がこだまする家づくり」と言っています。造り手は、その感動のこだまをひとたび味わったら、この世の中でどんな美味いものを食べた時より、どんな良いことにめぐり合った時よりもうれしくなります。
その喜びを味わったら、儲けが少なくても家づくりという仕事はやめられません。うれしくて、うれしくて、疲れなんてみんな吹っ飛んでしまうのです。
「いい家をつくる会」のメンバーは、そのような人たちの集まりです。言い換えますと、お客様に対して、私は期待を裏切りませんと宣言した人たちと言えます。住み心地の良さを共感し合うということは、一生その家の面倒を見るということです。だからこそ面倒を見るに耐える家、長期間にわたって丈夫で安心できる家をつくることにこだわるのです。
不思議なもので、住み心地の良い家というものは、いつまでも面倒を見たくなるものです。どんなクレームでお邪魔しても、帰る時にはお客様は笑顔で見送って下さる、それはうれしいものです。
ソーラーサーキットの看板を掲げている工務店は、全国で600以上あるようですが「いい家をつくる会」のメンバーは、その中で「住み心地」にこだわる家づくりに徹している人たちの集まりです。
さて、証言をお寄せくださった皆々様に心から感謝申し上げます。数ある住宅本の中で、私の本を信頼して実際に家を建てて下さったのですから、お一人、お一人に直接お会いして、「住み心地はいかがですか?」と聞いて歩きたい気持ちで一杯です。
でも、この証言集をいつも身近に置くことで、皆様との絆がより確かで身近なものになれましたことを心からうれしく思っています。
松井修三
(本より抜粋) |