新「いい家」が欲しい。

さらに「いい家」を求めて

だから「いい家」を建てる。

新「いい家」が欲しい。

著者 松井 修三
発行 創英社・三省堂書店
定価 1,500円(税込)

<著者からのメッセージ>

「客の好むものを売るな。客のためになるものを売れ」

(松下幸之助)


この言葉ほど、家づくりにおいて大切にしなければならないものはないと思います。私は次のように理解するからです。

<客はそれぞれ好みを持っているが、それが自分のためになると錯覚している場合が往々にして多い。錯覚や、一時の思い入れや、無知に乗じるような商売をしてはならない。客の幸せを心から願う者には、なにが客のためになるのかが分かるはずだ。それを良心という。正直という>


住宅業界、とりわけ大量生産販売の造り手たちがやっていることは、「客の好むもの」を売ることです。「客のためになるもの」を売るには、住む人の幸せを心から願い、その土地、その家族に合う住み心地の良い家を個別対応で造らなければなりません。それでは大量生産販売は成り立たないからです。

メーカー各社は、住宅展示場、テレビ・新聞・雑誌などの広告を活用して、自分にとって都合のよいものを、あたかも客が好むものであるかのように仕向け、錯覚させ、補助金や低金利ローンで煽って売っています。

その典型が、鉄骨系プレハブメーカーの「環境配慮型住宅」です。太陽光発電を標準装備にすれば最高の環境配慮となるというものです。


東日本大震災は福島第一原発の事故を誘発し、国民の電力への考え方に大きな影響をもたらしました。住宅業界は直ちに反応し、太陽光発電だけでなく、燃料電池を加え、創った電気を蓄電池に貯めて、「HEMS」(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)で見える化し、より効率的な電力消費に役立つ「スマートハウス」の展開を急いでいます。

業界のオピニオンリーダーである積水ハウスは、「グリーンファースト ハイブリッド」と称する家こそがこれからの本命だとPRを始めました。

<日々の快適と、環境の未来と、暮らしのエネルギーの問題に、先進技術のすべてを注いで答えます。日常は、節電と快適な暮らしを両立し、非常時にも、自立した生活を可能にする家づくり。積水ハウスから、新しい提案です。

エネルギーに「3つの備え」のある家。燃料電池、太陽電池、蓄電池の、3つの電池を備えた住宅、「グリーンファースト ハイブリッド」を世界に先駆けて実現しました。家庭内での暮らしのエネルギーを、効率よく「つくる、ためる、つかう」ための理想的なシステムを構築。最高レベルの「快適性、経済性、環境配慮」を約束する「グリーンファースト」が、いま、未来へ向けて進化します。>


つまり、これからの住宅は、電力への不安をいかに少なくするか、家庭用エネルギーの自給自足をどのようにして実現するかがテーマになるということです。

しかし、鉄骨プレハブの家が、それらの設備やシステムを付加しただけで最高レベルの「快適性、経済性、環境配慮」になるという約束が、はたして「客のためになるもの」なのか、はなはだ疑問です。

建築中の現場を観察すると、私の疑問に同感される方は多いと思うのです。


注目すべきは、木の500倍近くも熱を伝えやすい鉄と、木とグラスウールのような綿状の断熱材を組み合わせた構造です。

熱伝導が極端にバラバラですから、外部の温度の変化をまともに受ける鉄骨部分は結露を生じやすく、抱き合わせになっている木部を腐らせることが分かります。その隣には綿状の断熱材があるのですから乾燥できず、腐れをいっそう速めていくことになります。

腐らないとしたら、構造上どうにもならない大きな隙間と、断熱の仕方の不合理さに救われているからです。その分、住む人は不快でときには危険な温度差にさらされ、結露や寒い、暑いというストレスに悩まされるのは明らかです。

それでは、いくら地震に強いとしても住んでいる人は健康被害に見舞われ、命を縮めることにもなりかねません。


2007年の元旦、ダイワハウスは朝日新聞一面広告でこう訴えました。

「正しく言うと、外張り断熱通気外壁の家。この家は、ダイワハウスが培ってきた様々な技術によってつくられています。その技術の中で開発にもっとも苦労したのが、高密度グラスウールボード。ダイワハウスが大手専門メーカーと共同開発した、高性能な断熱材です。この断熱材で鉄骨を外側からすっぽりと包むことにより、外気を屋内に伝えにくくします。そうすることで屋内空間を快適に保ち、光熱費を削減。さらに二重防水や通気層などの工夫により、壁体内結露を抑制します。つまり、省エネで高耐久な家。これから家を建てるすべての人に、この良さを実感していただきたい」。

ダイワハウスの訴えは、言い換えるとこのようになります。

「鉄骨の家は、断熱の方法を外張り断熱に変えない限り、快適性も省エネ性も乏しい。また、内部結露を防ぐのが難しいので長持ちしない」

実に正直です。

しかし、同じ鉄骨造でありながら積水ハウスをはじめ、ヘーベルハウス、パナホームはそれを否定し、充填断熱がいいのだとしています。断熱の方法を変えたところで、快適性も省エネ性もさほど変わらない。であるならば、「3つの電池」を標準装備とし、エアコンを気兼ねなしに存分に使ってもらって快適にする方を「客が好む」と考えるのです。

太陽光発電を標準装備にしただけでも大ヒットしたのだから、余剰電力の買い取り価格が高く、補助金をもらえる間にさらに二つの電池を付加すれば、笑いが止まらなくなるという目論見もあるでしょう。

住宅展示場に行ったら、どちらの家造りがましなのか、太陽光発電などの付帯設備を取り除いたら、いったい何が家族のためになるのか、住み心地という住宅の根源的な価値がどれほどあるものなのか、じっくりと観察し、体感してみることです。


家づくりで何よりも大切にすべきものは住み心地です。住み心地を問わない建物は、事務所か倉庫と同じであり、仮設住宅の延長でしかありません。積水ハウスが主張しているように、「3つの電池」を備えたからといって住み心地がよくなるものではありません。それらは付帯設備であり、「構造」、「断熱」、「換気」の方法を正しく選択しないかぎりはダメなのです。

造り手が、ほんとうに環境にやさしく、住む人のためになる家を造ろうとするならば、迷うことなく構造は木造を、断熱は基礎を含めて「外断熱(外張り)」を、そして換気は「センターダクト方式」を選ぶでしょう。省エネ設備やシステムなどは、契約する時点で一番コストパフォーマンスに優れたものをお勧めすることになります。

「センターダクト方式」は、全熱交換型換気を用い、給気ダクトを小屋裏から床下へと通した垂直ダクトに一本化し、換気の経路を従来とは逆にするところに特徴があります。そうすることで、家中を合理的、効果的に換気することができ、住む人の健康増進と構造の長寿命化を図れるのです。基礎を含めて完全に外断熱された家のみが発揮する「蓄熱・保温、蓄冷・保冷」性能との相乗作用で、冷暖房効果が従来の家と比べて5倍以上高まります。


私は、このような家造りこそが「客のためになるもの」であると確信します。

住み心地は、家族の幸せの源泉であり、住宅の品位の根幹を成すものであるとともに、気候風土に根ざした住文化の根源となるべきものです。住み心地の向上なくしてCO2削減を追求しても、国民は幸せになれないと思います。

「3.11」以後のわが国の家づくりが、一番大切にしなくてはならない価値です。しかし現実には、文化人と称される人、学者、政治家、官僚の多く、そして家造りに携わる人ですらこの価値の大切さに気付いていません。


いまお住まいの家では、不快な寒さ、暑さ、湿気、結露、カビ、騒音、ホコリ、臭いなどに悩まされていませんか?

梅雨と秋の長雨の時期に、室内の空気を湿っぽく重たく感じ、冬には乾きすぎる空気に悩むことはありませんか?

私がお勧めする家は、部屋中どこも、地下室であっても、トイレの中も脱衣場も、いや、床下、小屋裏などであっても、四季折々、四六時中空気が気持ちよく快適です。しかも、冷暖房にかかる費用は安く、換気装置のお手入れは極めて簡単です。


ぜひ、ご家族おそろいで「住み心地体感ハウス」へお越しください。人は、理論や数値、価格、デザインやインテリア、設備などで惑わされやすいのですが、感性では簡単にごまかされません。自分たち家族の健康増進に役立つ家か否かは、理屈でなく感性で判断することが大事です。

「いい家」の体感を二回、三回と積み重ねると、住み心地に対する感性が驚くばかりに豊かになります。それから再度、住宅展示場を回ってみると、住み心地の質の差がはっきりとわかるようになり、納得が深まります。


この本は、「いい家が欲しい!」と心から願う人のためのものです。必ずお役に立つ、と確信しています。

「建ててしまった人は読まないでください。ショックを受けますから」というキャッチコピーは、読み終わってみると決してオーバーな表現ではなく、至極もっともだと頷かれることでしょう。

松井 修三

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